このページは伺かアドベントカレンダー第2会場の12日目の記事になっております。
著者は「だぶる×ついんず」シリーズの作者である北本椿です。
・はじめに
お前ら、久しぶりだな。大きくなったか?
さて、昨日に引き続き俺が記事を書かせていただくことになった。本当に有り難い話である。
この記事を読む前に必ず読んでおいて欲しいのが伺かアドベントカレンダー第1会場12日目の記事(あーるでぃー様執筆)だ。これは設定の多いゴーストでランダムトークを書く上で非常に分かりやすい記事なので読んでおいた方がいい。実績のある人が書いている記事はあらゆる分野において読んでおいて損は無いものだ。
逆に言うと、ここから下には役に立つことは書いていない。そこだけは昨日を下回る自信がある。
そう、ここからは実績が無い奴が書いた役に立たない記事である。つまり先ほどのリンクを読んだ後にこの記事を読むと「カレーを食べた後にうんこを食べる」のと同じ状況になってしまうわけだが俺にはもうどうしようもない。お悔やみ申し上げるばかりだ。
・設定資料集って何?
いつまでもお悔やみ申し上げても仕方ないのではじめよう。設定資料集といっても今回説明するのは伺かのイベントで販売されるようなPDFファイルや書籍のことでは無い。多くの場合ゴーストをクリックして出るメニューに中にある「用語集」や「設定」などの「ゴーストの中の設定をユーザが能動的に確認できる要素」のことだ(例えば先ほどのリンク先の記事の執筆者様のゴースト「ロスト・ユー・サムウェア」なら用語集という形で確認できる)。ちなみに論点がズレてしまうので「近代文学を解説する文学部のゴースト」「病院を舞台にした医者のゴースト」とかの「実在するものを解説する必要がある系」に付属している設定資料集は除外させてもらう。
作るメリットから書くと「ユーザが分からない用語があったら能動的に確認できる」ようになることだ。とりあえず設定資料を上から下まで読めば目の前のゴーストが何を言っているか分かるようになる。
デメリットは「作るのに圧倒的な手間がかかること」。俺は設定資料集を作るためにゴーストを作っているので全然問題ないが、はじめてゴーストを作るときに設定資料集まで作り出すと絶対エタるので(仮にそのゴーストがどれほどあなたの脳内で複雑な世界観を持っていても)お勧めはしない。なお、「そんなもの作ってもユーザは読まないかも知れない」というのは「缶切りはあるのに缶詰を食べずに死んだ」のと同じなのでここでは考えないようにする(後半で少しだけ補足します)。
・設定資料集とランダムトークの相関性
ゴーストは基本的にデスクトップで立たせてランダムトークをするのが主な機能だ。だから多くの場合「設定はランダムトークの中に自然に落とし込みたい」と思っているはず(リンク先の過去記事で丁寧に書かれているがランダムトークの数を確保するためにもそちらのほうがいろいろと望ましい)だし、ユーザ側からしてもランダムトークを見るだけで内容が理解できるのが楽だと思う。
正直、多くの用語集は「無くても不具合は無いが制作者側が分かりやすいように補助としてつけてくれている」(読むことが単純に面白かったり世界観への理解がより深まる等のプラス要素)ことが大半だ。なのでここでは「仮にランダムトークの幅を狭めることになろうが絶対につけなければならない場合」の話をしよう。
それはそのゴーストの中でのみ使われる専門用語の解説である。
そう、ゴーストが「現実社会」を舞台にしているなら設定資料集は必要ない、そこに登場する単語は全て「最悪調べれば出てくる」からだ。そしてそれ以外のユーザが分からない単語はそのほぼ全てが「登場人物名」に絞られる。それはメニュー内に「自己紹介」の欄を作って書くなりReadmeにでも書けば問題ないはずだ。
しかし「自分が作った専門用語」なら話は別だ。それをランダムトークの中に落とし込むと「特定の固有名詞を説明するだけの訳分からんトーク」が必要になる上に「ユーザ側からすればそもそもあるかも分からない固有名詞を解説するトークが登場するまで置いてきぼりになる」という「人災」が起こる。
例えば「だぶる×ついんず」シリーズには『超人力』と『異能』という単語が存在するが、ランダムトークだけで「一切予備知識が無い人間相手」に
1 この世界の人物が持つ不思議な力の総称が『超人力』
2 『異能』は『超人力』のカテゴリの1つ
という「だぶる×ついんず」シリーズにおいて知らないと大半のトークが楽しめなくなる設定を説明するのがどれだけ無謀か分かって貰えるだろうか。もっと最悪なのが昨日話題に出したので記憶に新しいであろう『女神』で同じく最低限の設定である
1 『超人力』の塊が意志を持ったもので現実社会の「女神」と呼ばれるものとは一切無関係
2 その生まれから様々な「個体パターン」を持つ
のをわざわざランダムトークからユーザに発掘させるのは「やる前にダメだと分かる」という話だ。もし分からなくても『女神』の1の説明には前提として『超人力』を理解していないといけないので『女神』の1のランダムトークが先に出た場合比喩表現では無く「専門用語の解説に専門用語を使うな」が起こってしまうのも分かって貰えただろう。
そしてこれは「唯一制作者だけが客観視できない」部分だ(制作者は全ての専門用語を無意識下で使えるのだから当然)。1つのランダムトークを理解するために一体いくつの予備知識が必要になるかを把握せずに専門用語満載の200もトークを書けばもはやそれは「知らない言語で喋るゴースト」でしかない。ちなみに初期の「だぶる×ついんず」はそれをやらかした上にゴーストがユーザに絡んでこないというエゲつないゴーストなので「こいつが偉そうに言うことは過去にやらかしたんだな」と思ってくれて間違いない。涙の数だけ女は強くなれるのよ。まあ俺は男だけど。
・木下くんでも分かる!設定資料集の書き方
とりあえずここまで読んでこれから自分が作るゴーストに将来的に設定資料集をつけるか否かは決まったと思う。最後にここまで勧めたのだから設定資料集の書き方を解説しようと思う。
1 トーク形式にしよう
設定資料集と言うと小説とかの「地の文」を思い浮かべてしまう人も多いと思うがこれは「ゴーストの中の機能」の1つなのを忘れてはいけない。だからトークと言う形にすれば読む方も負担は少ない場合が多い。ここからが重要なのだが「会話形式にすることで書く側が情報を取捨選択できる」と言う馬鹿デカいメリットが存在する。先ほどの『女神』の例をあげるなら
1 『超人力』の塊が意志を持ったもので現実社会の「女神」と呼ばれるものとは一切無関係
2 その生まれから様々な「個体パターン」を持つ
の2つだけを解説する1つのトークを『女神』の設定資料として閲覧できるようにすればいい。他の「水に浮かないけど呼吸は必要ないので溺れたりはしない」とか「女神核の接触で子供を作れる」とか「ストレスで液状化した『超人力』を口から吐き、『女神』ごとに色は違う」等の「他のランダムトークを読む上で必要になる『女神』への理解」を超えた範疇は解説しなくていい。そして設定資料に入らなかった部分はそっくりランダムトークに回せばいいのだ(余談だが漫画や小説の場合は世界観の解説は地の文にした方がいい。作者が責任を持って説明していることが読者に伝わるメタ的な手法だ)。
2 操作をダルくしないようにしよう
これは技術的な話だが1つの設定資料を見終わったら元のページに戻るように記述しておくと読む方が楽。やり方はググればでてくるよ!(多分伺かの作り方ってページにあると思います)
3 少しずつ増やそう
先ほどさんざん強火で脅しておいてなんだが、いきなり全てを解説しようとしなくてもいいし、現実的に出来ないと思う。最低限の単語の解説(後、シェルとして立っているゴーストの自己紹介とかもあるといい)があれば「俺は設定を説明する気がある」とユーザ側に伝えることができるはずだ。
4 でも、合わなかったらやめていいよ
紆余曲折の末に「やっぱり合わないな」と思ったのなら設定資料集を無理にゴースト内に置くことはしなくていいと思う。設定を個別で言語化するのが苦手な人は存在する。俺は自分の言ったことに責任は取りたいと思っているがゴーストを作るのが嫌になっては元も子も無いし、もしかしたらゴーストとは完全に独立した媒体のツイッター(新X)のタグ「伺か語り会」(実は伺かに関係するならばお題を無視した投稿もしていい)でも自分のブログでも好きなタイミングで情報を小出しにしていくのが合っているのかもしれない。
ともかく、ただ一つ言えるのは「何らかの方法で発信しないと伝わらない」ということだ。
5 読んで貰えなかったらどうしよう
これはゴーストを作っている最中に「このゴーストって需要があるのかな」とか「友達はみんな結婚したのに私だけ北本椿でいいのかな」とか余計なことを考えてしまう人が陥りがちだ。
俺から言えるのは「意外と読んでるよ」ということだ。昔「steamloverslovers」というゴーストを公開していて、それには「観光地解説」という自分でもいつ実装したか分からない項目があった。そして公開停止してから数年後に思わぬタイミングでそこを褒められたことがある。読んでいる人は意外と読んでいるのだ。
だから「読んで貰えなかったどうしよう」と思うのなら公開してからその要素を様々な媒体で熱くプッシュすればいい。むしろ「設定資料をつけないことで本来楽しんでくれるはずだった人があっさり脱落する」方が遙かにリスクだ。
・最後に
昨日に引き続きのアドベントカレンダーの執筆になり、また設定を語ろうかと思ったのですが今回は私が一番大好きで同時に力を入れている「設定資料集」を伺かゴースト内においてどのように考えているかを解説させていただきました、結果的に非常に説教臭い内容になっております。次機会があるならからあげの話とかしたいです。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
来年もよき伺かライフを。
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